この記事を書いた人

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
2026年10月に原木中山でクリニックを開業予定。
過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)は、「急激な尿意切迫感」を主な症状とする膀胱の疾患です。多くの場合、頻尿や夜間頻尿、さらには尿失禁を伴い、40歳以上の方の約8人に1人が何らかの症状に悩まされているとされています。
「トイレが近い」「急に我慢できなくなる」「夜中に何度も起きる」といった症状が見られる場合、過活動膀胱の可能性が考えられます。早期の受診と適切な治療により、生活の質(QOL)の改善が期待できます。
過活動膀胱の主な症状
過活動膀胱が疑われる場合、以下のような症状がみられます。
尿意切迫感
急に強い尿意が生じ、我慢が非常に難しい状態です。
頻尿
日中の排尿回数が8回以上となる場合があります。
夜間頻尿
睡眠中に1回以上トイレに起きることが特徴です。
切迫性尿失禁
強い尿意とともに、思わず尿が漏れてしまうことがあります。
特に「尿意切迫感」が過活動膀胱の診断において重要なポイントとなります。
過活動膀胱の原因
過活動膀胱は、膀胱の収縮を調整する神経系の異常や、加齢に伴う膀胱の過敏化が主な原因とされています。具体的な要因は以下の通りです。
加齢
膀胱の筋肉や神経の機能低下が症状を引き起こします。
神経の異常
脳梗塞やパーキンソン病など、神経系の障害が影響する場合があります。
前立腺肥大症(男性の場合)
前立腺の肥大により膀胱が刺激されることがあります。
膀胱炎などの炎症
炎症により膀胱が過敏になり、尿意が強くなるケースです。
骨盤底筋の緩み
女性では、出産や加齢により骨盤底筋が衰え、症状の原因となることがあります。
過活動膀胱の検査
過活動膀胱の診断は、以下の検査を通じて行われます。
問診と排尿日誌
患者さんの日常的な排尿パターンを把握するため、排尿回数や尿量を記録していただきます。
尿検査
膀胱炎や尿路感染症の有無を確認します。
超音波検査(エコー)
膀胱の残尿量や、男性の場合は前立腺の状態を評価します。
尿流測定検査
排尿時の勢いやスムーズさを測定し、他の排尿障害との鑑別を行います。
膀胱鏡検査(必要に応じて)
膀胱内に腫瘍や結石が存在しないかを確認するための検査です。
過活動膀胱の治療
過活動膀胱の治療は、症状の重症度や患者さんの生活状況に合わせた多角的なアプローチで行われます。
生活習慣の改善
カフェイン・アルコールの摂取制限
膀胱への刺激を避けるために推奨されます。
規則正しい排尿習慣の確立
決まった時間にトイレに行くことで、排尿パターンの改善を図ります。
骨盤底筋トレーニング
排尿をコントロールする筋肉を強化し、症状の改善をサポートします。
薬物療法
抗コリン薬
膀胱の過剰な収縮を抑制します。
β3作動薬
膀胱の筋肉をリラックスさせ、尿の貯留を促進します。
行動療法(膀胱訓練)
排尿間隔を徐々に延ばす訓練により、膀胱のコントロール力の向上を目指します。
手術療法(重症例の場合)
薬物療法で効果が得られない場合、ボツリヌス毒素注射や仙骨神経刺激療法など、より専門的な治療法が検討されます。
これらの治療が必要な患者様は、専門の医療機関にご紹介いたします。
尿のトラブルを感じたらご相談ください
過活動膀胱は日常生活に大きな影響を及ぼす疾患ですが、適切な治療により症状の改善が期待できます。
「急に強い尿意が生じる」「トイレに行く回数が多い」「夜間に頻繁に目が覚める」などの症状が見られる場合は、早期に泌尿器科専門医にご相談ください。