この記事を書いた人

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
2026年10月に原木中山でクリニックを開業予定。

神経因性膀胱とは?どんな病気?

神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)とは、尿をためたり排出したりする働きをコントロールする神経に異常が起こることで、排尿がうまくできなくなる状態をいいます。通常、膀胱と尿道の働きは脳や脊髄からの神経の指令でバランスよく調整されています。しかし、その神経が障害されると、尿がもれやすくなったり、逆に排尿ができなくなったりするのです。

神経因性膀胱の症状にはどんなものがある?

神経因性膀胱の症状は、神経のどの部分に障害があるかによって異なります。代表的な症状には次のようなものがあります。
・尿がしたいのに出にくい、出ない(尿閉)
・残尿感が強い
・頻尿や尿漏れ
・夜間の排尿回数が増える
・尿意を感じにくい

これらの症状は、単なる「年のせい」や「疲れのせい」と誤解されることもありますが、放置すると腎臓に負担がかかり、尿路感染症や腎機能障害を引き起こすこともあります。

神経因性膀胱の原因は?

神経因性膀胱の原因には、脳や脊髄、末梢神経の障害が関係しています。主な原因としては、
・脊髄損傷や椎間板ヘルニア
・脳卒中(脳梗塞・脳出血)
・パーキンソン病や多発性硬化症などの神経疾患
・糖尿病による神経障害
などが挙げられます。

また、子宮や前立腺の手術後に一時的に神経が傷つき、排尿障害が生じることもあります。

神経因性膀胱はストレスで起こることもある?

ストレスそのものが神経因性膀胱を直接引き起こすわけではありませんが、精神的なストレスが長く続くことで自律神経のバランスが乱れ、膀胱の働きが不安定になることがあります。この場合、「過活動膀胱」や「心因性排尿障害」といった症状に近い状態を呈することもあり、ストレスが排尿トラブルを悪化させる一因になるといえます。

神経因性膀胱は治るの?

神経因性膀胱は、原因となる神経の障害が軽度であれば、治療により改善する可能性があります。しかし、神経の損傷が重度の場合は、完全に治すことは難しいこともあります。その場合でも、排尿をコントロールしやすくする治療で症状を軽減し、生活の質を高めることが可能です。早期の診断と適切な治療がとても重要です。

神経因性膀胱と尿閉の関係は?

神経因性膀胱では、膀胱の筋肉がうまく収縮できずに尿を出せなくなる「尿閉(にょうへい)」が起こることがあります。尿が膀胱にたまったままになると、膀胱が膨らんで痛みが出たり、腎臓に尿が逆流して腎障害を引き起こしたりすることもあります。尿閉がある場合は、カテーテルで一時的に尿を排出するなどの処置が必要です。

神経因性膀胱は糖尿病とも関係がある?

糖尿病が長期間続くと、血糖値の高い状態によって末梢神経が傷つき、膀胱を支配する神経にも障害が及ぶことがあります。これを「糖尿病性神経因性膀胱」と呼びます。尿意が弱くなったり、排尿が遅れたり、尿が出にくくなったりするのが特徴です。糖尿病のコントロールが不十分だと症状が進行するため、血糖管理と泌尿器科での治療の両立が大切です。

神経因性膀胱の治療方法は?

神経因性膀胱の治療方法は、原因や症状に応じてさまざまです。主な治療には以下のようなものがあります。
・薬物療法:膀胱の収縮を助ける薬や、過剰な活動を抑える薬を使います。
・排尿訓練:定期的にトイレに行くことで、膀胱のリズムを整えます。
・間欠的自己導尿:自分でカテーテルを使って尿を排出する方法です。
・電気刺激療法:神経を刺激して膀胱の働きを整える新しい治療もあります。

これらの治療を組み合わせることで、多くの方が排尿トラブルを軽減し、安心して日常生活を送れるようになります。

神経因性膀胱は、放置すると腎臓にも悪影響を及ぼす可能性があるため、早めの受診が何より大切です。尿の出方に違和感がある、残尿感が強いなどの症状が続く場合は、泌尿器科で相談しましょう。