この記事を書いた人

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
2026年10月に原木中山でクリニックを開業予定。
蛋白尿とは?どんな状態なの?
蛋白尿(たんぱくにょう)とは、本来ほとんど尿中に出ない「たんぱく質」が尿の中に漏れ出ている状態を指します。健康な腎臓は、血液中の老廃物だけをろ過し、体に必要なたんぱく質は再吸収して体内に戻します。しかし、腎臓のろ過機能が何らかの原因で障害されると、尿にたんぱく質が混ざるようになります。
健康診断の尿検査で「尿たんぱく陽性(+)」と指摘された場合、一時的なものか、病気によるものかを見極めることが大切です。
蛋白尿と血尿はどう違う?一緒に出るときは注意が必要?
蛋白尿と血尿はどちらも尿検査でよく見つかる異常ですが、原因となる病気や意味合いが異なります。
・蛋白尿:腎臓の「ろ過装置」である糸球体や尿細管の障害で、血液中のたんぱく質が尿に漏れ出している状態。
・血尿:尿の通り道(腎臓・尿管・膀胱など)で出血が起きている状態。
ただし、蛋白尿と血尿が同時に出ている場合は、腎臓自体の病気(糸球体腎炎、IgA腎症など)の可能性が高まります。
「痛みがないのに尿の検査で蛋白と血が出ている」と言われた場合は、腎臓専門医や泌尿器科での詳しい検査が必要です。
蛋白尿の原因には何がある?
蛋白尿の原因には、一時的なものと病気によるものがあります。
一時的な蛋白尿は、体に負担がかかったときに一過性に起こるもので、以下のような場合に見られます。
・激しい運動の後
・発熱や脱水時
・ストレスが強いとき
・寒さや疲労がたまったとき
一方で、慢性的に蛋白尿が続く場合は、腎臓や全身の病気が関係していることが多く、注意が必要です。
代表的な原因としては、
・糖尿病(糖尿病性腎症)
・高血圧(高血圧性腎症)
・慢性糸球体腎炎、IgA腎症
・腎硬化症
・ループス腎炎(膠原病の一種)
などがあります。
蛋白尿ににおいはある?
通常の蛋白尿自体には特有のにおいはありません。
しかし、尿に含まれるたんぱく質が多くなると、細菌が繁殖しやすくなり、アンモニア臭や生臭いにおいを感じることがあります。
また、膀胱炎や腎盂腎炎などの感染症を併発している場合には、強いにおいや濁りを伴うこともあります。
「最近、尿のにおいが強くなった」「生臭いにおいがする」と感じたら、早めの受診をおすすめします。
蛋白尿の色は変わるの?
蛋白尿そのものは無色透明なことが多く、色の変化では気づきにくい症状です。
ただし、蛋白尿と同時に血尿や感染症を伴う場合は、尿の色がピンク色、茶色、または濁った白色に変わることがあります。
特に「泡立ちが強い尿」は注意が必要です。
尿を勢いよく出したとき以外でも、コップに尿をためたときに泡がなかなか消えない場合、蛋白が混ざっている可能性があります。
蛋白尿から考えられる病気にはどんなものがある?
蛋白尿の原因となる病気は多岐にわたります。主な疾患は次のとおりです。
・糖尿病性腎症:長期間の高血糖で腎臓の血管が傷つき、たんぱく質が漏れやすくなります。
・高血圧性腎症:高血圧による血管のダメージで腎臓のろ過機能が低下します。
・慢性糸球体腎炎・IgA腎症:腎臓の糸球体に炎症が起こる病気で、蛋白尿と血尿が同時に出ることが多いです。
・ループス腎炎:膠原病(全身性エリテマトーデス)による腎障害です。
・ネフローゼ症候群:尿中に大量のたんぱく質が出て、むくみ(浮腫)が強くなる病気です。
早期には自覚症状がほとんどないため、健診の尿検査で指摘されたら軽視せず、必ず精密検査を受けましょう。
蛋白尿の治療方法は?
治療は原因によって異なりますが、共通して重要なのは腎臓への負担を減らすことです。
・生活習慣の改善:塩分を控え、バランスの良い食事をとる。過度な飲酒を避け、適度な運動を心がけます。
・薬物療法:血圧や血糖をコントロールする薬を使用し、腎臓の負担を減らします。ACE阻害薬やARB(降圧薬)は蛋白尿を減らす効果もあります。
・感染症や炎症性疾患の治療:必要に応じて抗菌薬やステロイド薬を使います。
腎臓は一度傷つくと回復しにくいため、早期発見・早期治療が何より大切です。
蛋白尿を改善するには?日常でできる予防とケア
蛋白尿を改善・予防するためには、生活習慣の見直しが欠かせません。
・塩分を1日6g以下にする
・加工食品を控える
・水分をこまめに摂る(脱水を防ぐ)
・体重・血圧・血糖を管理する
・睡眠をしっかりとる
・定期的に尿検査を受ける
特に糖尿病や高血圧がある方は、腎臓への負担を減らすことが重要です。
「泡が多い」「尿のにおいが気になる」「健診で蛋白尿が出た」と言われた場合は、早めに泌尿器科・腎臓内科で相談しましょう。