この記事を書いた人

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
2026年10月に原木中山でクリニックを開業予定。
膀胱がんの症状とは?どんなサインがあるの?
膀胱がんは、膀胱の内側を覆う粘膜(移行上皮)に発生する悪性腫瘍です。早期の段階では自覚症状が少なく、気づかないうちに進行することもあります。
最も多い症状は血尿です。痛みを伴わない「無症候性血尿」が特徴で、尿がピンク色や赤くなるのに痛みがない場合は、膀胱がんを疑うサインです。
その他の症状として、以下のようなものがあります。
・排尿の回数が増える(頻尿)
・排尿の途中で痛みや違和感がある
・尿の出が悪い、勢いが弱い
・残尿感がある
これらの症状は膀胱炎と似ていますが、抗菌薬を使っても血尿が続く場合や、再発を繰り返す場合は早めの検査が必要です。
膀胱がんの初期症状にはどんなものがある?
膀胱がんの初期症状として最も多いのが血尿です。
初期の段階では、痛みや排尿困難がほとんどなく、「健康診断で尿潜血を指摘されて初めて気づいた」という方も少なくありません。
また、がんが膀胱の壁の浅い部分(粘膜や粘膜下層)にとどまっているうちは、症状が軽く、気づきにくいのが特徴です。
一方、がんが深く進行して膀胱の筋層にまで広がると、次のような症状が現れることがあります。
・下腹部の鈍い痛み
・排尿時の強い痛み
・尿が出にくい、途中で止まる
・腰や骨盤の痛み(進行がんのサイン)
「痛みがない血尿」は軽視しがちですが、膀胱がんの早期発見の大切な手がかりとなります。
膀胱がんの原因には何がある?
膀胱がんの発生には、さまざまな要因が関係しています。主な原因として次のものが知られています。
・喫煙(たばこ):膀胱がんの最大の危険因子です。喫煙者は非喫煙者に比べて発症リスクが約3倍高いとされています。
・化学物質の曝露:染料、ゴム、皮革、印刷などの職業で使われる化学物質(アリルアミン系など)への長期的な曝露が影響します。
・慢性的な膀胱炎や結石:炎症が続くと、がん化のリスクが上がることがあります。
・加齢や男性ホルモン:膀胱がんは男性に多く、50歳以上での発症が目立ちます。
生活習慣の中でも、特に喫煙の有無は大きなリスク要因です。禁煙によって再発リスクを下げることもできます。
膀胱がんの種類にはどんなものがある?
膀胱がんは、がん細胞の形や広がり方によっていくつかのタイプに分類されます。
・移行上皮がん(尿路上皮がん):最も多いタイプで、膀胱がんの約90%を占めます。粘膜から発生し、早期発見すれば治療効果が高いのが特徴です。
・扁平上皮がん:慢性的な感染や刺激(カテーテル留置など)によって発生することがあります。
・腺がん:まれなタイプで、膀胱の粘液腺から発生します。
また、がんの進行度によっても区分されます。
・表在性(非筋層浸潤性)膀胱がん:膀胱の表面にとどまるタイプで、再発しやすいが治療で完治を目指せます。
・筋層浸潤性膀胱がん:膀胱の筋肉層にまで広がるタイプで、手術や抗がん剤治療が必要になります。
膀胱がんの治療にはどんな方法がある?
膀胱がんの治療は、がんの進行度や広がりに応じて選択されます。
・経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT):内視鏡を使って、膀胱の中から腫瘍を切除する治療法です。早期の表在性がんに対して行われ、入院期間も短めです。
・膀胱内注入療法:再発を防ぐために、抗がん剤やBCG(免疫療法薬)を膀胱内に注入します。
・膀胱全摘除術:筋層浸潤がんや再発性のがんでは、膀胱を取り除く手術が必要になることもあります。
・化学療法・免疫療法:進行したがんや転移がある場合に行われます。近年は免疫チェックポイント阻害薬など新しい薬の効果も報告されています。
早期発見された膀胱がんは治療の選択肢が広く、再発を防ぐための継続的な経過観察が欠かせません。
膀胱がんの検査はどうやって行うの?
膀胱がんの診断には、以下のような検査が行われます。
・尿検査:尿中に血液やがん細胞が含まれていないかを確認します。
・尿細胞診:尿に混じったがん細胞を顕微鏡で観察します。
・超音波(エコー)検査:膀胱の中の腫瘍や壁の異常を調べます。
・CT・MRI検査:がんの広がりや転移の有無を詳しく評価します。
・膀胱鏡検査:内視鏡を尿道から挿入し、膀胱内を直接観察して腫瘍を確認します。
膀胱鏡は局所麻酔で短時間に終わる検査です。膀胱がんは再発しやすい特性があるため、治療後も定期的な検査が非常に重要です。
膀胱がんは、早期に見つけて治療すれば高い確率で回復が見込める病気です。血尿や頻尿などの症状がある場合は、「膀胱炎かも」と自己判断せず、早めに泌尿器科で検査を受けることが大切です。