この記事を書いた人

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
2026年10月に原木中山でクリニックを開業予定。
腎臓がんの症状チェック|どんなサインに注意すべき?
腎臓がん(腎がん)は、腎臓の中にできる悪性腫瘍で、特に「腎細胞がん」が全体の約9割を占めます。初期の段階では自覚症状が乏しく、健康診断や人間ドックの超音波(エコー)検査で偶然見つかるケースも少なくありません。
しかし、次のような症状が見られる場合には注意が必要です。
・尿に血が混ざる(血尿)
・腰や背中の片側が痛む
・腹部にしこり(腫れ)を感じる
・体重が急に減る
・発熱や倦怠感が続く
・貧血、むくみ、高血圧が出る
特に「痛みのない血尿」「背中やわき腹の違和感」は腎臓がんの代表的なサインです。血尿は一時的に治まることもあるため、放置せず早めの受診が大切です。
腎臓がんはどんな痛みが出るの?
腎臓がんによる痛みは、がんがある程度大きくなってから出てくることが多いです。痛みの特徴は次のようなものです。
・腰の奥や背中の片側に鈍い痛みがある
・体を動かしても痛みの場所が変わらない
・片側のわき腹(肋骨の下あたり)に重い痛みや圧迫感がある
・痛みがだんだん強くなる
腎臓は背中側の深い位置にあるため、筋肉痛や腰痛と勘違いされることもあります。痛みが続く場合や血尿を伴う場合は、腎臓がんの可能性を含めて泌尿器科での検査を受けましょう。
がんが進行すると、腫瘍が周囲の臓器や血管を圧迫して痛みが強くなることがあります。また、骨転移を起こすと腰や背骨に強い痛みが出ることもあります。
腎臓がんの原因には何がある?
腎臓がんの原因は完全には解明されていませんが、以下のような生活習慣や体質がリスクを高めるといわれています。
・喫煙(たばこ):最も大きな危険因子のひとつで、喫煙者は発症リスクが約2倍になります。
・肥満・高血圧:代謝異常やホルモンバランスの変化が腎臓の細胞に影響します。
・慢性的な腎臓病:透析を長期間行っている方では発症リスクが上がります。
・遺伝性要因:家族に腎臓がんの既往がある場合、発症しやすくなることがあります。
・化学物質への曝露:職業的に有害物質を扱う環境もリスクとなることがあります。
特に喫煙・肥満・高血圧は生活習慣に関係しているため、禁煙や体重管理などの予防が有効です。
腎臓がんの検査はどうやって行うの?
腎臓がんが疑われる場合、次のような検査を組み合わせて診断します。
・超音波(エコー)検査:腎臓の形や大きさ、腫瘍の有無を確認します。最も一般的で痛みのない検査です。
・CT検査:造影剤を使って腎臓内部や血管の状態を詳しく調べ、がんの広がりを評価します。
・MRI検査:CTではわかりにくい部分をより詳しく確認します。
・尿検査:血尿やがん細胞の有無を調べます。
・血液検査:腎臓の機能や、がんが分泌する異常な物質(腫瘍マーカーなど)を調べます。
これらの結果をもとに、腎臓がんの進行度(ステージ)を判定し、治療方針を決めます。
腎臓がんは血液検査でわかる?
血液検査だけで腎臓がんを確定診断することはできませんが、腎臓の機能異常や腫瘍による変化を推測する手がかりになります。
腎臓がんがある場合、以下のような異常が見られることがあります。
・血中クレアチニンの上昇:腎臓の働きが低下している可能性があります。
・赤血球増多症:腎臓がエリスロポエチンというホルモンを過剰に分泌することで、血が濃くなることがあります。
・貧血:進行がんでは出血や栄養障害により貧血が起こることもあります。
・肝機能異常(Stauffer症候群):がんが肝臓に転移していないのに、肝機能が悪化することがあります。
血液検査は、腎臓がんの早期発見よりも、全身状態の把握や治療方針の決定に役立つ重要な検査です。
腎臓がんは早期では症状が出にくい一方、進行すると転移を起こすこともあります。血尿や腰の痛み、体重減少などがある場合は、「年齢のせい」と思わずに早めの受診を。定期的な健康診断と画像検査が、早期発見の最大の鍵です。