この記事を書いた人

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
2026年10月に原木中山でクリニックを開業予定。

血尿とは?どんな状態を指すの?

血尿(けつにょう)とは、尿の中に血液が混ざっている状態をいいます。目で見てわかる「肉眼的血尿」と、検査でのみ確認される「顕微鏡的血尿」があります。
肉眼的血尿は、尿が赤色・茶色・ピンク色に見える状態で、多くの方が驚いて受診されます。一方、顕微鏡的血尿は自覚症状がないため、健康診断や人間ドックの尿検査で初めて指摘されることが少なくありません。

血尿は「痛みがないから大丈夫」と思われがちですが、実は泌尿器系の病気のサインであることもあります。早めの受診と正確な検査が重要です。

血尿の原因(女性の場合)は?

女性の血尿の原因には、泌尿器の病気以外にも、婦人科的な要因が関係していることがあります。主な原因には次のようなものがあります。

・膀胱炎:女性に最も多い原因です。排尿時の痛みや頻尿、残尿感を伴います。細菌感染によって膀胱の粘膜が炎症を起こすことで血尿が出ます。
・尿道炎:膀胱炎と似ていますが、排尿の最初に痛みや血尿が出るのが特徴です。
・月経の影響:生理中や直後は、経血が混じって血尿のように見えることがあります。
・尿路結石:石が尿管を傷つけることで血尿や強い痛みが出ます。
・子宮や膣の病気:子宮筋腫、子宮頸がん、膣の炎症などでも出血が尿と混じって見える場合があります。

女性は尿道と膣が近いため、どちらからの出血かを区別することが難しいことがあります。婦人科と泌尿器科の両方の受診が必要になるケースもあります。

血尿の原因(男性の場合)は?

男性の場合、血尿の原因として多いのは次のような病気です。

・前立腺肥大症:前立腺が大きくなって尿道を圧迫し、膀胱内の血管が破れて血尿が出ることがあります。
・尿路結石:腎臓や尿管に石ができ、尿の通り道を傷つけて出血を起こします。強い腰痛を伴うことが多いです。
・前立腺がん・膀胱がん:初期には痛みがなく、血尿だけが唯一のサインであることもあります。特に50歳以上の男性では注意が必要です。
・感染症(前立腺炎・尿道炎など):排尿時の痛みや熱感を伴うことがあります。

男性は加齢とともに前立腺のトラブルが増えるため、血尿が出た場合は放置せず、泌尿器科で原因を調べることが大切です。

血尿をほっといたらどうなる?

血尿が一時的に出て自然に治まることもありますが、自己判断で放置するのは危険です。
実際には、以下のような深刻な病気が隠れている可能性があります。

・膀胱がんや腎臓がんなどの悪性腫瘍
・尿路結石による尿路閉塞
・慢性腎炎などの腎臓疾患

また、血尿が続くと貧血を起こしたり、腎機能が低下して慢性腎不全につながることもあります。
特に痛みのない血尿は要注意です。痛みを伴わないからといって安全とは限らず、早期発見が遅れるケースもあります。

血尿から考えられる病気とは?

血尿の背景には、さまざまな病気が隠れています。代表的なものを挙げると、

・膀胱炎、尿道炎、腎盂腎炎などの感染症
・尿路結石
・膀胱がん、腎がん、尿管がん、前立腺がんなどの腫瘍性疾患
・慢性糸球体腎炎、IgA腎症などの腎臓の病気
・外傷や運動後の一時的な出血(ランナーズヘマチュリア)

血尿の性状によって、出血の場所を推測することもあります。排尿の最初に出る血尿は尿道由来、途中や最後に出る場合は膀胱や腎臓の可能性が高いと考えられます。

血尿の治療方法は?

治療は原因となる病気に応じて行います。

・膀胱炎や尿道炎:抗菌薬による治療で改善します。再発防止には水分摂取と排尿習慣の見直しが重要です。
・尿路結石:自然排石を促す薬や、体外衝撃波で石を砕く治療(ESWL)が行われます。
・腫瘍(がん):早期であれば内視鏡手術、進行していれば外科的切除や抗がん剤治療が検討されます。
・腎臓疾患:免疫抑制剤や食事療法で腎機能を守る治療が中心になります。

また、原因がすぐに特定できない場合も多いため、尿検査・超音波検査・CT・膀胱鏡検査などを組み合わせて原因を探ることが大切です。

血尿は一見軽い症状に見えても、深刻な病気のサインであることがあります。「痛みがないから大丈夫」と思わず、血の混じった尿を一度でも見たら、できるだけ早く泌尿器科で相談しましょう。早期発見・早期治療が健康を守る第一歩です。